voice

voice

ハンドメイドを通して
喜びや楽しみの輪を広げていきたい

ouchi zakka:竹吉久美子さん

起業のきっかけ

ouchi zakka」は、手づくりだけを集めた雑貨店です。始まりは、10年ほど前。年に1回、自分やほかの作家さんの作品を集めて販売するイベントを始めたことでした。店名にもなっているように、その頃から場所は自宅。長らくイベント時だけリビングを片付けDIYで壁などを塗り直して使っていました。義両親が営む飲食店「じわもんや」を手伝っていたこともあり、休日を利用して年12回のイベント開催、月34日の不定期オープンなどいろいろな形態をとっていましたが、3年前、金、土、日曜、祝日という週末を中心とした営業をスタート。そのタイミングで居住空間を2階へ移動し、初めて業者にお任せするリフォームをして専用の空間をつくりました。今は、平日に作家としての創作活動、週末はショップの運営というスタイルに落ち着いています。

お店は、ひがし茶屋街から徒歩5分。大通りに面した石垣の上に立つ築100年以上の自宅の一角にあります。古い建物ですが、雰囲気や佇まいが好きで、手を入れすぎないよう改装しました。「石垣を上ってみたかった」、「人の家に遊びに来るみたい」など皆さんこの立地や建物も含めて楽しんでくれています。場所柄、お客様は観光の方と地元の方、ちょうど半々くらい。集客はInstagramなどのSNSが中心で、作品を収めてくれる50人ほどの作家さんの中にはご自身のSNSで発信してくれる方もいるので、お店や商品に関するハッシュタグをつくってお渡しし、相乗効果で検索数が増えるようにしています。

手づくりで起業したのは、昔から好きだったから。15年前、結婚して金沢で暮らすようになってからもしばらくは趣味として楽しんでいたのですが、つくったものを紹介していたブログを介して知り合いが増え、知り合いから雑貨店、作家さんへと輪が広がり、イベントに出店するようになりました。その頃から、自分で手づくりを楽しむ場を主催したいと思うようになり、観光地にも近い自宅で何かできないかなとイメージが広がっていきました。

自宅ショップを実現するには、家族の理解が不可欠です。私は良くも悪くも自由人で、結婚前の会社員時代は無理をしていたところがありました。そんな自分の性格もあって、家族にはずっと「自分で何かしたい」「好きな手づくりに関わりたい」と言い続けていたので、「リビングを使わせてもらっていい?」という話になったとき、「ああ、昔から言ってたもんね」と自然に受け入れてもらえました。こんな風に言うと作戦勝ちのようですが、自分の気持ちを言葉にして伝えることは起業への第一歩であると思います。私を理解し今も協力してくれる家族には本当に感謝しています。

店内はアクセサリーやスワッグ、ポーチなどハンドメイド作品がいっぱい!時間を忘れて見入ってしまう

石垣の上というわくわくするような立地を活用。お客様は階段を上るところから「ouchi zakka」を楽しんでいる

大変だったこと

週末オープンを始めたばかりの頃はペースがつかめず、無理というか暴走していたと思います。平日は一つでも多く商品をつくって、週末は来てくれたお客様全員に声をかけて。とにかく何でも一生懸命していたら、気分的に苦しくなってしまいました。最初ってどうやったって気合が入るんですよね。好きだから、やりすぎちゃう。好きなことで起業する弊害かもしれません。限界を感じていたとき、ちょっと乱暴な言い方ですが、みんながみんなお客様じゃないって気がついたんです。店を好きだと思ってくれる人が少しずつ増えればそれでいいと気持ちを切替えたら、すごく楽になりました。

お店づくりには時間をかけ、週末営業を始めた3年前と翌年の2回改装しました。本当は最初にまとめてしたかったのですが、「本格的に営業してから考えたら」という夫のアドバイスがあったのです。そのときは「分かってもらえないんだな」と悲しい気持ちになりましたが、結果的には大正解。お店を始めたことで、それまで作業をしていたキッチンが材料などであふれてしまうという予想外の事態が発生。手つかずのスペースを作業場にすることができました。また、前年度の売上から無理のない範囲で予算を組んで改装したので、計330万円の費用を借り入れせずに準備できたことも良かったこと。背負うものは少ない方がいいですから。

営業を知らせる白い看板。お客様のアドバイスで、バスに乗っている人の目に合わせて石垣の少し高い位置に掲げる

コンセプト・強み

正直に言うと、思い描いていたのは今とまったく違うお店でした。私はリネンなど素材重視でシンプルなものが好きなのですが、場所柄なのかお客様の年代も好みもさまざまで、あまり反応が良くなかったんです。お客様が求めるものと揃えた商品にギャップがあったということですね。それで、カラフルなポーチとか、アクセサリーとかを反応を見ながら増やしていったら、今のお店になりました。でもそれを嫌だと思ったことはありません。私にとって重要なのは、お客様や作家さんが喜んでくれること。頑固に理想を貫くのではなく、手づくりという大きな枠だけ決めて、自由に変化していきたいと思っています。

接客面では、お客様に小さなことでも特別を感じてもらえるよう心がけています。できる範囲ですが、ちょっとしたものを添えたり、ラッピングを工夫してみたり。これは、イベント出店で学んだことなのですが、一生懸命さが伝わったらお客様って本当素直に喜んでくれ、ますし、ずっとつながっていてくれるので、その気持ちに応えたいと思っています。

イヤリングやピアスの手直しができることも喜ばれています。パーツを取ったり短くしたりといった私ができる範囲のことなら基本的には無料です。お客様にとって融通がきく、お気に入りが見つかる、そんなお店でありたいのです。

手づくりのものが好きという共通点があることも大きいのですが、販売だけでなくそういった細かな気持ちのやりとりが私自身好きなんです。それに、私の作家としての技術はまだまだで、自分の商品だけでは満足してもらえないことを自覚しています。ほかの作家さんの作品に補ってもらう意味は大きいので、ネット販売より実店舗を持つことにこだわりました。お店というお客様や作家さんと共有できる空間がなければ、私が起業することも「ouchi zakka」もなかったと言えます。

竹吉さんの作品はイヤリングやピアスなどのアクセサリーが中心。1600円~と買いやすい価格も意識している

今後の展開

気候がいい45月、811月あたりは臨時という形で営業日を増やすことを考えています。桜のシーズンなど出歩きやすい時期は週に4、5日オープンして、その代わり雪や雨で足元が悪い冬は少しのんびりと。これまでは大雪の日も週末ならオープンしてきたのですが、やはり来てくださる方は少ないので、長く続けるためにももう少し肩の力を抜いて頑張るポイントを決めるのもいいかなと思っています。

私がおばあちゃんになってもふらっと立ち寄ってもらえるようなお店が憧れ。昔の駄菓子屋さんみたいなイメージです。2号店、3号店を出して事業拡大という考えは今のところないのですが、まったく違うテイスト、例えば洗練されたハンドメイドの店をやってみたいなという妄想はあります。でも、自分の手が届かない範囲のことはできない性分なので、実現はしないでしょうね。

message/ 女性先輩起業家からのメッセージ

起業に大切なのは柔軟性だと思います。「好き」が縛りになって、「これをしたいんだ」みたいな気持ちがあまりにも頑なになりすぎるとお客様の欲しいものや気持ちからどんどん離れてしまいます。お客様に寄り添って自分が変わっていくことを楽しみだと捉えるか、苦痛と感じるかで起業後の道のりはまったく違ってきます。自分のつくるものは変わっても、それも楽しいと思えたら先は明るい。私は編み物が大好きだったのですが、今はアクセサリー制作がメイン。でも楽しいので続けています。お客様が求めるものの中で自分もやりたいなと思えるものを選ぶ。自分の好きなことは、ちょっと後に置いておくくらいの気持ちでいると精神的にもいいのではないでしょうか。

あとは無理をしないこと。自分とも仲良くして、追い詰められないくらいのペースを守りながら進めばいいと思います。

大変なこともたくさんありますが、私は起業してよかったと思っています。毎日がワクワクの繰り返し。自分の思い通りに動けて、頑張った分だけ返ってくる仕事ってやっぱり楽しいです。

profile/ プロフィール

ouchi zakka:竹吉久美子さん

兵庫県出身。15年ほど前、結婚を機に石川県へ移り住む。趣味だった手づくりについて発信するブログをきっかけにイベントに出店するようになり、作家とのつながりもできたことから、年に12度自宅リビングを開放して「ouchi zakka」をスタート。自らも作家として創作活動をしながら、店の客層や雰囲気に合う作品を全国から探して仕入れるディレクターやバイヤーの役目も努める。

https://www.instagram.com/ouchizakka/
2021年度取材

この記事をシェアする

follow us