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体の動きに集中し、交流で心を解き放つ
日々の喜びに目覚めるヨガレッスン

OIKUYOGA(おいくよが):池澤育江さん

起業のきっかけ

体を動かすことが好きで、学生時代は水泳やバスケ、ダンスなどに熱中していました。結婚・出産後は特定のスポーツはやっておらず、何か始めたいという気持ちが漠然とあって。長男・次男がまだ幼稚園児だった頃、ヨガの先生になりたての友人に興味本位でヨガを教えてもらうことになりました。そのとき、すごく体がすっきりして、「これは健康のために一生続けるべきことだ!」と強烈に思ったんです。長く続けられる教室を探して、ヨガに詳しいママ友から紹介されたのが金沢の「M YOGA」というヨガスタジオ。入会するやいなや、すぐにのめり込んで週34回は通っていました。

続けるうちに、ヨガをやる前の自分の状態と全く変わってきたのを感じました。特にレッスン後は頭も体も冴えわたるようになって。ハードに体に負荷をかけているわけではないのに、全身の筋力や体幹が鍛えられ、長年の冷えも解消されたのには驚きましたね。当時は子どもが通う幼稚園近くのカフェでパートをしていましたが、ヨガのレッスン後に行くと体のキレが違う。仕事がはかどり、1日の充実感も高まりました。

レッスンの担当だった先生の年齢を感じさせない颯爽とした姿に、いずれはこんな女性になりたい、と憧れていました。ある日、大先輩のその先生から「講師になったらどう」と誘われ、まだまだ無理だろうと思っていた心に火がつきました。私も誰かにとっての「毎週会うのが楽しみになる存在」になりたくなったんです。そのときは、ビジネスや起業といった発想は全くなく、ただただ「憧れ」と「好き」という気持ちが大きかったですね。

それから指導者養成講座を半年間受講し、修了後すぐにM YOGAのインストラクターになりました。ちょうど次男が小学校入学のタイミングだったので、カフェを退職し、ヨガに専念することに。周囲にヨガをやりたいという友人が何人もいたので、自宅でレッスンも開始しました。

フリーとしての活動の場を広げるために、単発レッスンにもチャレンジしました。注目したのがレンタルスペース。当時、金沢、白山、野々市など、レンタルスペースが各地にあり、盛んに子育てママ向けのイベントが開催されていたんです。自分も身を持って経験していますが、忙しい子育てママはどうしても自分のことを後回しにしがち。そんなママにこそリフレッシュが必要と考え、呼吸と合わせたゆったりとした動きのプログラムを企画しました。Instagramでイベントを告知すると、週5回の68人のクラスが満席になることも多かったです。SNSでの集客が流行り始めた頃でもあり、ママたちの目に留まりやすかったのかもしれませんね。

その後は、ママ友や共通の友人を通じて知り合った発酵食やバランスボールの講師の方とコラボイベントをしたり、薬局の空きスペースで薬に頼らない体づくりを目指す「代謝アップヨガ」をしたりと、さまざまなレッスンスタイルを経験しました。これまで集客にほとんど苦労がなかったのは、自分だけの力ではなく、こうした方々とのつながりで集客力の相乗効果があったからだと思います。

屋外で親子でリフレッシュ!キッズヨガ×ママヨガ×お楽しみ会のコラボイベント

コンセプト・強み

「こんな場をつくってくれてありがとう」。私の生徒さんからよく聞く言葉です。いわゆる教室というと、先生と生徒というタテの上下関係が生まれがち。でも、私が大切にしているのはヨコの関係です。ヨガは、体はもちろん、心とも深い関係があるメソッド。レッスン中は体の動きに集中し、未来の不安や過去の後悔を忘れ、心の執着から離れます。そうやって体を動かした後、もやっとしたことやムカッとしたことなど、心にひっかかっている日々の出来事を気兼ねなくおしゃべり。自分を取り繕わずに話すことで、心が開かれていく。教室ではいつもそんな雰囲気づくりを心がけています。長く通ってくださる生徒さんが多いのはその成果の表れかなと思っています。

生徒さんをよく観察し、適切に声かけする、細やかなコミュニケーションも大切です。前のレッスンとの変化を見逃さず、「体力がついてきたね」「ポーズがきれいになったね」と、的をはずさずほめることを続けていくと、みるみる生徒さんは良い方向に変化していきます。その成長を見るのも楽しいですね。

3年目から「金沢市ものづくり会館」を拠点に定期レッスンを開催するようになり、活動の軸ができました。土台になっているのが、「トレーニングママヨガ」です。ヨガの教室がどんどん増える中で、独自の特色を出したいと企画しました。ヨガにはポーズ、呼吸、マインドフルネスなど、さまざまなアプローチがあるのですが、これまでの指導していて最も楽しかったのが、負荷が高めのトレーニングを取り入れたレッスンでした。かなりハードですが、終わった後の達成感が大きく、みんなでやり抜いたという部活のような一体感がすごいんです。これを子育てママ向けに改良し、「時短」「筋トレ」「リフレッシュ」が叶う90分のプログラムにしました。トレーニング後にティータイムも用意したので、ママ同士の交流もできて大好評でした。毎回ほとんど満席になり、キャンセル待ちの人気でしたね。

現在、「トレーニングママヨガ」は週2回の定期レッスンとなり、OIKUYOGAの看板レッスンになっています。ハードでついていけないママ向けに「ゆったりママヨガ」も開講し、どちらも息の長いクラスになっています。よりリラックスしていただくために、休止中のレッスン後の交流タイムも、コロナ禍が落ち着いたらぜひ再開したいと思っています。

ママの部活といっても過言ではない、ハードな「トレーニングママヨガ」。子ども連れで参加できる。

大変だったこと

スタート以来、ほとんど集客に苦労せず順調にやってきたので、コロナ禍は初めての試練でした。軒並み対面レッスンができなくなった上に、同時期に育休を終えて卒業される生徒さんが多く、固定客が激減したのです。転居された方や対面レッスンが不安という方のためにオンラインレッスンを開始しましたが、オンラインの新規のお客様が継続してきてくださるかというと、難しい面がありました。

また、コロナ禍がやや落ち着き、対面レッスンを再開しても、なかなか満席にならないことも多くなってきました。思い当たる原因は、コロナ禍で積極的な集客を控えていたこと、そして近年のヨガ教室の変化。さまざまなスタイルのヨガ教室が続々と登場し、特に柱だったママ向けヨガの需要の変化を肌身で感じています。まさに起業6年目にして迎えた、自分にとっての大きな転換期だととらえています。

今後の展開

次のステップに踏み出すにあたって、自分がなぜヨガを続けたいのか、教えたいのかを振り返ってみました。最初にヨガを習ったときに感じた思い、長年にわたって自分のヨガの基本となっているのは、やはり「心と体の健康」です。それを真に必要としているのはどんな人?と考えたとき、浮かんできたのが、50代以上の女性でした。3040代は多少無理をしてもリカバリーできる。更年期で体調が揺らぎ、子どもの巣立ちや介護などで環境が大きく変化する世代こそが、「心と体の健康」を本当に求めているのではないかと。周りのミドル~シニア世代の女性たちにお話を伺うと、年齢を重ねるごとに「孤独」という問題も深刻化するといいます。

「もっと上を目指せ」と常に成長を促すのが今の時流ですが、本来は健康な体があり、そこに呼吸が入ってくるだけで幸せなこと。「今、足りている」ということに気づいてほしい。50代以上の女性なら、そうした本質的なことをわかっていただけるのではないか。頭の中のイメージがまとまって生まれたのが「50代以上の女性の心と体をサポートするプログラム」。これが私の新たなミッションになりました。運動が苦手でもやりやすいヨガに、日頃の悩みや思いを語り合うティータイムをプラスして…そんな大人の女性の方向けのレッスンをまもなく始めたいと準備しています。

毎月1回のキャンドルライトの灯りのみで行う夜のリラックスヨガ

一方で、「自分をもっとよくしたい」と頑張りたい女性たちのために、FRP(ファンクションローラーピラティス)を取り入れたレッスンもやっていきます。筋肉を効率的に動かし、体幹を鍛えられる方法です。コロナ禍の影響で、自己流で「宅トレ」をやる人が増えたと思うので、正しい方法を伝えていきたいですね。

message/ 女性先輩起業家からのメッセージ

よく一歩踏み出すのが大変といいますが、私のやり方は「やる日を決めてしまう」ことです。やると決めたらレッスンもイベントも、どんなに当日の参加者が少なくても必ず決行します。新しいチャレンジのたびに「本当にやれるのかな」と毎回思いますが、主宰した以上はやらないと。その積み重ねが経験という財産になっていきます。

思うだけなら簡単ですが、実行するときはプレッシャーや緊張が常につきまといます。それだけのパワーがいるので、自分で自分をいつも後押しすることが大切です。基本的にはやりたいことがあれば、何でもやってみればいいのでは。経験した分だけ力になるし、人脈もできます。さまざまな尊敬できる方と出会えて、自分と違ったものの見方を知り、なかなか気づけない視点からのアドバイスもいただけますよ。

私自身が気をつけているのは、レッスンのスケジュールをあまり詰め過ぎず、生徒さんの満足度を上げることに心を注ぐこと。忙しさで心の余裕がなくなり、自分らしさがなくなってしまっては本末転倒ですから。ヨガを伝え始めた当初から「細く長く続けていくこと」、この目標は変わりません。

 

profile/ プロフィール

OIKUYOGA(おいくよが):池澤育江さん

金沢市出身。2016年にM YOGA100時間指導者養成講座を修了し、ヨガインストラクターとして活動し始める。3年前から子育てママに特化した「トレーニングママヨガ」を開始し、好評を得ている。現在は、ものづくり会館を拠点に定期講座を開催するほか、発酵食やフットケア、アロマなどの講師とのコラボイベントも積極的に行っている。

Instagram/@oikuyoga

2022年度取材

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