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起業のきっかけ
幼い頃から大の動物好きで、学校帰りに野良犬やよその家の飼い犬を触っては癒やされていました(笑)。物心ついた頃にはすでに、将来は何か動物にたずさわることをしたかったですね。高校生になると、ドッグサロンで爪切りやシャンプーなどアシスタント的にバイトをするように。私の思いを知るサロンのオーナーさんからトリミング専門学校へ行くことを勧められ、犬だけでなく猫の実習もできる名古屋の専門学校を選びました。県外で多額の学費がかかるので、自分の本気度を示そうと生活費は高校生のうちにバイトで貯め、親には学費のみを援助してもらいました。
専門学校卒業後2年間は学校に残り、実習アシスタントに。そのまま残ることも勧められましたが、地元でショップを開く夢を絶対に実現したかったのでUターンしました。まずは1人前になるまで修業しようと考え、地元の大手ペットショップに就職。面接時に「いずれは自分の店をやりたい」とはっきり言いましたが、逆にその意気を買われ採用してもらえました(笑)。
お店には先輩が大勢いたので当初はシャンプーばかり。ひと通りのトリミングがこなせるようになるまで5年かかりました。その間に結婚して、2人目が生まれてまもなく夫の親と同居しました。もともと独立は、まず先に結婚して子供を生み終えてからと計画していましたね。その方が独立した後にブランクをあけずにすむからです。なので2人目の育休中に「この子が3歳位になったら独立しよう」と決め、そのタイミングで実現させました。
独自のサービスや工夫は?
やはり「出張トリーミングカー」というサービスが石川県唯一のものという点です。ショップにいた頃、タクシーで来店し長時間店舗で待っているお客様を目の当たりにして、「もっとお客様や動物たちにストレスのない方法はないのか」と考え続けていました。ふと浮かんだのがこのアイディア。ネットで「出張トリミング」で検索すると、他県では実施されていて、トリミング専用のカーゴもいろいろあるんです。じゃあ、なんで石川にはないんだろう? と当初は不安になりましたが、「ないなら自分がやればいい」に結局は行き着きました。きっとやってほしい人がいる、来てくれたらうれしいと思う人がいる、という確信が私にはあったんです。
最終的に迷ったのは、訪問して家でトリミングするか、トリミングカーにするか。家だったら散らかるし後片付けも大変、犬も甘えると思ったので、設備が整ったトリミングカーに決めました。貯めてあった自己資金と借り入れを投入してカーゴを購入。扱うシャンプーなどの消耗品はペット用品の卸問屋に勤める夫がいろいろと相談にのってくれました。宣伝広告は開業時にチラシなどを配布したりしましたが、ショップ時代のお客様とその近所の方からの口コミで徐々に知られるように。このカーゴのもの珍しさも宣伝効果があったみたいです(笑)。
カーゴでは、仕上がりも接客もドッグサロン以上の満足感を持っていただけるように務めています。ステンレスの殺風景なシンクをレンガ調のテープでかわいく覆ってカフェ風に演出したり、車だということを忘れさせる工夫も。また犬はとてもデリケートなため、無理強いはせずにほめながら施術することも大事。飼い主さんと仲良くしている様子を見ると安心するので、コミュニケーションも欠かせませんね。仲良くなったお客様のお宅で1時間まったりお茶をごちそうになることも多いです(笑)。
やりがいと今後のこと
自分の技術が「人と社会の役に立ってる」と今は強く感じます。お客様は、店に動物を連れて行けずに困っているお年寄りや、移動時間や待ち時間が取れない働く女性たち。忙しいお母さんたちから「これで家のことができる」と感謝の声をいただくと、もっともっとがんばりたい、応えたい、という気持ちが一段と強くなります。移動カーゴは店舗よりも大変なことが多いですが、やりがいもずっと大きいですね。移動で大変なことは、冬の雪、夏の暑さ、時間厳守のためにルート選びやスケジューリングを慎重にしなければいけないなど。自分ひとりしかいないので、日々の健康管理も気を抜けません。
今後は、車をもう1台増やす、店舗と移動を併用する、なども検討しています。スタッフを雇うことに抵抗感はないですし、複数のほうが精神的な余裕ができて良いのではとも思っています。ショップでの後輩育成の経験も活かせますし、これからは経営の勉強もしていきたいですね。
message/ 女性先輩起業家からのメッセージ
profile/ プロフィール
出張トリミングカー わんかーご:畑 愛さん
12年間、ペットショップのトリマーとして勤務。
2016年 モバイルトリミングサロン「わんかーご」設立。
お客様の自宅まで出張する移動式トリミングカーで、サービスを提供している。
※2017年度取材
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