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人生にゆとりと幸せを生む
整理収納の知識を多くの人に伝えたい
Sukkirari☆スッキラリ:金野 美保さん
起業のきっかけ
整理収納サービスというと、掃除の代行や便利屋さんと間違われることがあります。私が「Sukkirari☆スッキラリ」で提供しているのは、お客様一人一人に合った維持できる整理収納術。すっきり、きれいな状態が続く仕組みをご依頼主と片付けをしながら一緒につくっていきます。
私自身は元々片付けが苦手。幼い頃なんて、母から「片付けなさい」と言われたら、本や手紙を引っ張り出して部屋中に広げるものの、あっという間に時間がきて「ごはんよー」って言われたらささっと重ねて隅に追いやるような状態でした。
高校・大学でアメリカやスペインへの留学を経験し、帰国して小学校の英語講師をしていた時に結婚。出産を機に一旦仕事を休みました。時間はあるはずなのに家族が増えてモノが増え、片付けても片付けても片付かなくて、毎日イライラ。それが生活にも影響し始めて、ごはんをつくろうと思っても、子どもは泣いているし、おもちゃは散らかってるし、自分は眠たいしで立ち上がる気力もない。そんな時、テレビをつけると「人生がときめく片付けの魔法」の近藤麻理恵さんや「断捨離」のやましたひでこさんが活躍されていて、そういえば実母が亡くなる前の実家で、重ねた大皿をガチャンガチャンと音を立てながら取り出していたのを雑誌か何かの見よう見まねで百円ショップの書類ケースに立てて収納してみたら、とても喜んでくれた記憶がよみがえってきました。今思えば、整理収納の道への入口はこのときだったのかもしれません。整理収納アドバイザー2級という1日で取得できる資格があることを知り、すぐに子どもを夫と実父に預け、認定講座を受けに行きました。「なんとか今の暮らしを変えたい」と藁をもつかむ思いでした。
お湯を沸かすケトルの下の引き出しに、カップとコーヒーをまとめて収納する。これは使用頻度という整理収納法で一般論ではあるのですが、2級整理収納アドバイザー認定講座を受講して、そういった片付け方を知らなかったことに気づいたんです。幼い頃から工夫することが好きだったので、理論を知って自分なりに片付けていくことや家が整っていくことが楽しくて。「私はモノを捨てられないタイプでそこは変えられないから、買い方に気をつけてみよう」と生活スタイルも見直すようになって、そんな自分の変化もおもしろかったです。
でも、この時はプロになるつもりは一切なく、仕事をするなら雇われる方が楽だとずっと思っていました。だから、仕事にするというよりもうちょっと学びたいなって思っていた時に、タイミング良く上位資格の勉強会が初めて金沢で開催されることになって。じゃあちょっとやってみようかなと勉強して、1級整理収納アドバイザー資格をとりました。
この頃、仕事を再開するタイミングだなとは考えていたのですが、子どもが急に熱を出しても休みにくいなど、子育てしながら勤めるもなかなか大変だと聞いて。当時の金沢では、整理収納アドバイザーという資格も職業もまったく知られていませんでしたが、せっかく知識を得たことだし、仕事にしてみようかなと考えるようになりました。
大きかったのは、私自身が整理収納に救われたこと。自分が苦しんだからこそ、みんなに整理や収納の少しの知識と知恵があれば本当に毎日が楽になるということを知ってほしい。特に仕事や家事、育児に忙しい女性や心がしんどくなっている女性に届けたいと2015年、「Sukkirari☆スッキラリ」を立ち上げしました。
大変だったこと
起業したもの、最初は全くうまくいきませんでした。お客様がいないので、とりあえずブログをはじめて、お金を掛けられないから自分でホームページをつくって。ちょうどわが家をリフォームしたこともあって、限られたスペースにいかに収納をつくるか考えたことなど自分の経験も織り交ぜて、一番ニーズが高いと思われる住宅関係の、建材メーカーやハウスメーカーに提案したりもしました。
でもすぐには仕事にならなくて、結局翌年に小学校の講師に週2日の非常勤として戻りました。収入面はもちろんですが、日々誰も見ないブログを更新したり、ただ「いいね」が欲しいために人の記事に「いいね」しに行ったりすることが不毛だなって思って。ところが不思議なもので、英語講師に戻った頃から依頼が増えはじめたんです。まだ仕事と言えるほどではなく、月に数件あるかないかの状態ではありましたが、私にとってはうれしい変化でした。
知らない人が自宅に来るって相当なプレッシャーですよね。それも片付いていないところに。だから、なるべく名前と顔と整理収納アドバイザーというものを知ってもらおうと、お声がかかればどこでも行きましたし、いろんなイベントにも出ました。ワンコイン片付け相談みたいなこともやりましたね。収支的には赤字ですけど、おかげで起業仲間と呼べるような人達との出会いにも恵まれました。
今も思い出すのは、起業1年目に再会した会社員時代の先輩の言葉。うまくいかないことを愚痴っていたら、「そうやって文句ばっかり言うなら、どこかに働きに行けば」って言われて頭をハンマーで殴られた気がしました。自分が好きでやっているのだから自分が楽しくないと、お客様にも協力してくれる家族にも失礼だと気付ました。
私は、お客様の毎日をもっと良いものにしたり、家族関係を良くするための手段として、片付けがあると思っているので、単に空間が整っても誰も幸せじゃなかったら意味がないんです。順風満帆の起業ではなかったけど、そのおかげで私がやりたいことの本質に気づくことができ、今があります。
コンセプト・強み
これまで、北陸3県を中心におよそ300件、1500時間の片づけに関わらせていただきました。現場にたくさん行かせていただいているので、応用力というか臨機応変さは誰にも負けないと自負しています。いろいろな家庭を見てきたからこそ、家族構成や職業、暮らしぶりなどからお客様に最適な提案もできるのだと思っています。
片付けって正解がないので、おしゃれにしたいといった目指すイメージのほか、子どもや障がい者、高齢者がいるなどの事情も踏まえ、すっきりきれいな状態をキープできる方法を考えます。環境が変わるだけで、毎日の意欲や健康状態まで違ってくるんですよ。「同じ時間でできる料理が一品増えました」「買い物に行かなくなってお金が貯まりました」「家族団らんの時間ができました」という声をいただいたほか、「私なんて片付けすらできなくて」って涙を流された方が、前を向いて「職安に行ってみようと思うんです」と言ってくださったこともありました。しかも、何年か後にお会いした9割以上の方がすっきりきれいな状態を維持できているんです。これってすごいことですよね。
最近、夫と話すのですが、今の仕事をしていなかったら、私は絶対依頼する側だったと思うんです。自分を見ているようだからなんとかしてあげたい。私が現場にこだわるのには、そんな気持ちもあるのです。
今後の展開
何万円という棚は買うけど、同じ金額を私どもにかけていただくのは難しい。それはなぜなのかと考えると、整理収納の価値がまだ認められていないからなんですね。お客様から「収納が足りない」とよく聞きますが、実際に収納用具を購入したのは300件中5件ぐらい。整理収納の知識って生活のスキルでもあるのです。
まだまだ整理収納アドバイザーを知らない方も多くて、祖母でさえ私がどんな仕事をしているかよくわかっていません。片付けにお金を払う人がいるのかとか、家の人がやればいいじゃないって言われることもあります。でも、現代は皆さん忙しいし、得意な人が得意なことをすればよくて、それで毎日家族も仕事もうまくいけばそれに越したことはないと思うので、もっと多くの方に整理収納や整理収納アドバイザーについて知ってもらうことに力を入れていきたいと思っています。そのためには、失礼な言い方になりますが、単に片付けが好きな人とは違う一定レベル以上のサービスを提供できることも重要。考え方によってはライバルを増やすことにもなる整理収納アドバイザー認定講座の講師をしているのは、こういった思いから。これからも現場仕事と講師業、どちらもバランスよく続けていきたいです。
message/ 女性先輩起業家からのメッセージ
profile/ プロフィール
Sukkirari☆スッキラリ:金野 美保さん
転勤族だった父に伴い北海道など各地で暮らした後、金沢へ戻る。高校生の時にアメリカへ留学した後、大学生の時に再びアメリカとスペインへ。帰国後、留学経験を活かし小学校の英語講師をしながら、「Sukkirari☆スッキラリ」を起業。整理収納アドバイザーとして個人宅や企業、商店などの片づけ指導を行うほか、整理収納アドバイザー認定講座の講師として後進の育成にも力を注ぐ。プライベートでは二児の母として育児にも邁進中。
Sukkirari☆スッキラリHP
※2021年度取材
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