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仕事、子育て、介護で頑張る女性を美しい下着が持つ力でサポート

ラ・ソルボンヌ:埴田 淑子さん

起業のきっかけ

県外の短大を卒業後、地元の小松に戻り、小松市役所で勤務。23年間、公務員として働きました。でも、その間ずっと何か違和感のようなものがありました。もともと、音楽や美術など美しいものが大好きだったので、無機質で組織的な職場の雰囲気にどこか窮屈さを感じていて。そんな気持ちをどう解決したらいいのかわからないまま、趣味の生け花や、カラーコーディネーターの資格取得にのめり込んで発散していました。また、職場に出張販売に来ていたお店によって高級下着の存在を知り、そのラグジュアリーな魅力にすっかりハマってしまいました。残業続きでハードなときも、お気に入りの下着を付けて自分を鼓舞して、頑張る毎日を送っていましたね。

埴田 淑子さん

そうやって年月を過ごすうちに、生け花の師範免許を取得したことから、市役所のお仲間に教室を開くように。花展に頻繁に出品したりするうちに、人脈も広がり、プライベート面がどんどん充実してきて…「自分の感性をもっと表現したい」という気持ちがどんどん強くなっていったんです。一方、その頃から上司に管理職試験を勧められるようにもなってきていました。でも、管理職になれば、ますます拘束時間が長くなり、好きなことができなくなるかもしれない…そうなったら、生きている意味がない…とまで考え始めるようになりました。定年までもう待てない、1度きりの人生を後悔したくないと、起業を決心しました。

実はいずれお店を持ちたいという気持ちは以前からずっと頭の中にありました。それが現実味を帯びてきたのはおなじみのランジェリーショップの女性オーナーの方から「自分はもう高齢なので閉店を考えているけれど、引き継いでやってみる?」とお声かけいただいたからなんです。そこから、閉店約2年後にその店舗を借りることができ、2013年春から開店に向けて動き出しました。当初はまだ市役所で働きながら、夜に事業計画書を書き、徹夜になることも。どうせやるなら、大好きなワコールブランド「サルート」メインの取扱店になろうと、ワコールの担当者に直談判。最初は、公務員で販売経験もなかったので、担当営業の方は終始渋い表情でしたが、サルートへの熱い想い、自分が展開したいお店のイメージを強くアピールし、最終的にはワコールの上層部にまで熱意が伝わったことで「ならば全面的にバックアップしましょう!」と、取扱店の許可をいただき、オープンに向けて走り始めました。

店舗改装や商品仕入れの資金は、自己資金や補助金、融資を活用しました。ちょうど、アベノミクス政策で「女性起業支援」の動きが活発になってきていたのも、よいタイミングだったと思います。融資が決定した2013年秋から、新作の展示会に赴いて仕入れを開始し、2013年12月に退職。2014年3月、念願だったお店をオープンしました。

大変だったこと

とにかくサルートというブランドが大好きで、「このブランドを多くの人に知ってほしい」という一念で突っ走ったので、開店後に経営面について何も知らないことに、はたと気づきました(笑)。それからはとにかく、経営・接客・マーケティングを必死で勉強しましたね。経営は顧問税理士やISICOの専門家の方から原理原則を学び、接客スキルはワコールのセミナーやトップ販売員のレクチャーなどで習得。集客・PRなどのマーケティング法は、同業種のマーケターの本や教材などを参考にして実践したり。それをひたすら5年間繰り返して、一歩一歩、現在の形にしていきました。

デザイン・機能性・補正力のすべてに惚れ込んだ「サルート」のランジェリー

デザイン・機能性・補正力のすべてに惚れ込んだ「サルート」のランジェリー

開店当初は、地方都市の商店街に突然きらびやかな下着店が出現したので、周囲から奇異な目で見られたこともありました。入店していただければ、商品の良さがわかってもらえるのに…と悔しい思いもしました。地元タウン誌に約1年間広告を出し、地元の認知度はある程度アップしたのですが、もっと広く下着ファンの方々にPRしたい、また、初めてのお客様からは「入るときに勇気が必要だった」というお声をいただいていたので、ブログやSNSでも積極的に発信を始めました。この方法は予想以上にヒットして、県外エリアからもわざわざ足を運んで下さるようになりました。

お店の強み

起業にあたっての事業計画書にも記した当店の特徴は、「ランジェリー」「カラー」「花(生け花)」の3本柱でやっていくということでした。1年目は起業の基礎を徹底して身に付け、2年目からはいよいよ自身の強みを発信しようと、接客に「パーソナルカラー診断」を取り入れることに。お客様の肌を美しく見せるカラーを診断し、それに合った色のランジェリーを選べるため、お客様の満足度やリピート率も高くなると考えました。時間をかけて丁寧にコンサルティングするので、ときには2時間ほどかかる場合もあります。

さらに3年目からは、生け花とランジェリーをコラボレ―ションさせたディスプレイを手がけることに。店頭のディスプレイはもちろん、ワコール主催の「サルート全国ディスプレイコンテスト」にチャレンジしました。コンテストでは初めての応募にもかかわらず最優秀賞、翌年も続けて最優秀賞を受賞し、驚きと同時に大きな励みになりました。メーカーやお客様からも大きな反響をいただき、このことがきっかけで来店者もぐんと増えたように感じます。3本柱の具体的な発信手段が見つかり、お客様に当店の魅力がより伝わりやすくなったとも感じています。

2018サルート全国ディスプレイコンテスト 最優秀賞受賞作品。生け花とランジェリーを融合したディスプレイは前例がなく、多くの注目を集めた

2018サルート全国ディスプレイコンテスト 最優秀賞受賞作品。生け花とランジェリーを融合したディスプレイは前例がなく、多くの注目を集めた

message/ 女性先輩起業家からのメッセージ

公務員時代の経験から、「きれいなランジェリーやナイティで、仕事や子育て・介護にがんばる女性たちをサポートしていきたい」との思いで始めたお店でしたが、昨年、その思いが確信に変わる出来事が起こりました。2018年2月、地元は37年ぶりの豪雪に見舞われ、予約が入っている新作商品もいつ届くか見込みが立たない状態でした。ようやく商品が届き、早速SNSでお知らせすると…豪雪にもかかわらずお客様がどっと来店してくださったんです。連日の雪かきに追われ、会社や買い物にも行けず、ストレスがたまっておられたのでしょう。久々の心浮き立つ話題をみなさん喜んでくださり、明るい色を中心に商品がどんどん売れていきました。このときの熱気に溢れた様子を見て、「美しいものには心の乾きを埋めてくれる力がある」と確信しました。子育てしながら働く忙しいママや、マタニティブルーに悩む女性など、当店には下着に癒しを求めて来店される方が大勢おられます。そんな方々の喜びが自分の生きがいに繋がっているんだなぁと日々感じます。

私のここまでの道のりには、必ず誰か応援してくれる人がいました。自分の情熱を信じてがんばっていると、必ず道は開けていくと思います。ただ、準備段階でのマーケティングはとても重要です。その鉄則ともいえるのが、「自分の強み」を知り、最大限に尖らせること。不得意なことはがんばっても普通レベルにしかなりません。自分の店で買っていただくメリットを、自分ならではの強みでどう打ち出すかを考え抜き、行動し続けることが起業。私も最近になって、漠然としていたコンセプトが確立し、形になってきたと感じます。自分が選んだ道は間違いなかったと、芯のようなものができたので、これからも美しい下着を通して、お客様の元気と癒しのお手伝いをしていきたいですね。

profile/ プロフィール

ラ・ソルボンヌ:埴田 淑子さん

小松市役所職員から一念発起し、2014年に小松駅前でランジェリーショップを開業。ワコールの高級ブランド「サルート」をメインに、独自の審美眼でセレクトしたアイテムを取扱い、県内外に顧客を持つ。生け花草月流の師範資格やカラーコーディネーターの資格を活かし、店舗ディスプレイや個別コンサルティングにも取り組んでいる。2017年・2018年サルートディスプレイコンテスト最優秀賞受賞。サルート全国販売コンテスト通算5期入賞。2020年3月現在、完全予約制として営業中。

http://sorbonne.biz/

※2019年度取材

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